擬死再生

「修業で山に入るいうんは擬死再生やで」 数年前に関西で山岳修行をしたときに、同行した先輩修行者からいわれた言葉を思い出した。 昨日の「窮すれば…」を書いて読んでたら浮かんで来たのだけど、「擬死再生」というのは簡単に言うといっぺん死ぬということ。これはもちろん比喩として聞かないと大変です。 いっぺん死んで、それで人生はおしまいというのでは修行になりませんから。 だから「擬」死ということが本当に大事で …

窮すれば変ず

「窮すれば通ず」という有名な慣用句の原型が「窮すれば即ち変じず、変ずれは即ち通ず」であることを最近知った。もうちょっとやさしくすると、「困りきったら変わる、変わればなんとかなる」ということだ。 いずれも事態は困り果てた時に思わぬ好転があるという意味に変わりはない。因みに英語の場合は次のように言うらしい。 When things are at the worst they will mend.(物事 …

カウンセリングは植物を育てるように

カウンセリングは植物を育てるのに似ている。この話は河合先生の『カウンセリングを考える(上)』に出てきます。 本の中で不登校の子供を例にとって説明をされますが、世の中にはどうしても学校に行けない子供というのが一定の割合でおられます。本人は「学校へ行きたい」とか「学校には行かなければいけない」と思っているのに、朝になるとお腹が痛くなったり、頭が痛くなったりする子がいるわけです。あるいは、どうしても目の …

自分の力でよくなっていく

野口整体とユング派の心理カウンセリングの治癒過程は、見ていくとよく似たところがあると思います。 それは一言でいえば「無為を上手に使う」ということ。もっと身近に表現すると「そのままでいる」とか、「自然治癒」とか、「何もかもお任せ」みたいな言葉でも良いかもしれない。 これは偶然ではなくて、ユングが東洋思想のタオイズムからいろいろ学んだことと、野口先生が子供の頃から老荘思想に親しんだことに起因します。そ …

9月活元会のお知らせ

9月の活元会を下記の日程で行います。 ■日程 ○9/3 (日)10:00-12:00 ○9/7 (木)10:00-12:00 ○9/17(日)10:00-12:00 ○9/21(木)10:00-12:00 ■内容 整体・心理学の資料を用いた座学及び活元運動の実習 終了後お茶の時間があります(12:20位まで ご参加は任意です) ■参加費 2,000円 ■その他のご案内 服装は白系の落ち着いたものが …

錯覚を起こそう

精神療法家 神田橋條治先生の『精神療法面接のコツ』を久しぶりに読み返した。わりと冒頭の方に明治生まれの奇術師 石田天海師のエピソードが書かれていて、そこを読むといつも自分の仕事の在り方を再点検させられる。 その概略はだいたい次の通りである。師によると「マジック」というのは「現象を見せる」のが本質なのだそうだ。これとは違って「やっていることを見せる」のはジャグラーであるという。ここでいう現象というの …

言語化の壁

以前に比べて最近はめっきり「整体」を語らなくなった。実際に人を前にすると整体についていろいろしゃべれるけれど、不特定多数に向けての文字化にはとまどうし躊躇する。誤解をおそれるのかも。だから語らないというよりは「綴らない」の方が表現としては正確かも知れない。 どっちにしても言語化したものからは「核心」が抜け落ちてしまうと思う。老子には「知るものは語らず、語るものは知らず」という言葉があるけど、ちょう …

8月 活元会・修養会のお知らせ

8月の活元会・修養会を下記の日程で行います。 ■日程 ○8/6 (日)9:45-12:15 活元会 ○8/10(木)9:45-12:15 活元会 ○8/20(日)9:45-12:15 活元会 / 12:30-14:00 修養会 ○8/24(木)9:45-12:15 活元会 ■内容 ○活元会 座学(教材の素読・音読)・活元運動の実習 ○修養会 野口晴哉の「潜在意識教育」と中国の古典「老子・荘子」、ユ …

飲食男女

老荘研究のパイオニア福永光司さんと河合隼雄さんの対談本『飲食男女ー老荘思想入門』を読んだ。タイトルからして何のことか‥と思ったらどうやら人間の生命活動の根源的な動きを象徴した言葉らしい。つまりは自己保存の要求と、種族保存の要求。俗に「花より団子」という言葉もあるけれど、この世の中の活動は花と団子が生命エネルギーの根源といえる。 特定の宗教では人間における動物的な欲求を否定的に見る向きもあるけれど、 …

何もしないという技術

この2週間くらいずっと『荘子』を読んでいた。野口先生は多方面に渡って深い学識を備えた人だったが、中でも最大のよすがとしていたのはやっぱり荘子だと思った。整体の智の中には禅も生きているけれど、その縦横無尽の自由性は老荘思想に裏打ちされたものだったと、4冊の文庫本を前に唸っていた。 一言でいえば「この世界」に対する絶対的な信頼とでも言ったらいいだろうか。一神教によく見られるような、世界を生みだした「全 …