足の裏は語る

近頃横綱、元横綱の動向を中心に相撲のニュースが多かった。僕は身体に興味がある人間だがとりわけ相撲の話には喰いつく、なぜか…。その相撲ネタの一つとして前から横綱の土俵入りの型の四股はなぜ左2回・右1回なのか氣になっていた。

整体で左足というとケガとの関連性を思い出す。左足をケガするときは感情のつかえ、情動との関連を斟酌する。重心の右左差という観点で街を歩いている人を観ていくと左重心の人が多い。どうも左足は相撲の型に限らず軸足としての役割が多いらしい。

平沢 弥一郎著『足の裏は語る』という本には右足と左足には機能的役割分担があるということが記されていた。数多の調査によると足の裏の面積比率は左足の方が大きいという。

また左右の重心比の統計をとった結果、排尿の時は無意識に左足に体重が掛っていることが多いとも記されていた。逆に意識的に右足に重心を掛けると小水の出が悪いということだったそうだ。

奇しくも整体操法では排尿の急所は左足の内ももとされている。尿の出が悪い時ここにじっと愉氣をする、またはそこの筋をはじくようにすると利尿作用がある。おしっこを我慢すると内股でもじもじするのもこの辺と関係があるのだろう。

日本の芸道における型とは身体の中の自然が表に現れているものだった。お相撲の型が左右対称でないのもこういった身体感覚に由来するのかと、なんとなく腑に落ちた。

国宝土偶展

上野公園に足を運んだ。10年くらい前はよく洋画を見に美術館に行っていたのだけど、今回の目的は土偶を見ることだった。http://ueno.keizai.biz/headline/459/

会場に展示されているのはつい4~5千年前の日本。現存する造形物としては最古のものに近いのだろうけど、もはや同じ系譜の民族とは思えないな。重心が下がったズシ・・とした安定感、人間の発達起源は足だったことが良くわかる。

会場を周っていくと社会科の教科書で見た『縄文ビーナス』という土偶に遭遇した。

小さい面、細く釣り上がった目、広く発達した骨盤(妊婦さんですけど)、整体学的に見ると10種(骨盤開型)っぽい。この人はきっとモデルがいたはずだ。

渋めの情報なのだけど頭の上(飾り?髪型?)の渦巻き模様がとっても氣になる…。これはつむじなのかなぁ。骨盤と後頭骨の関係性を考えると、いわゆる頭蓋骨がずれた状態、「つむじ曲がり」では難産になりかねない。母体の健やかなることを願って頭頂部にきれいな渦巻きを模したのかな。

土器を見に行ったがやっぱり人形とともに展示場にいる人たちの後ろ姿も氣になる。中学生の集団が来場していたが、今時の日本の子供は腰に勢いというか若々しさが少ない。子供のうちから腰が落ちてしまっているし、成人しても腰のそりが発達していない人も多くなった。

正座をしない、歩かない、とくれば当然の成り行きなのだけど、いわゆる体力の基礎となる「腰」が育たないまま出産、育児と頑張るのだからいろいろと苦労が多いと予想する。土偶を見ながら現代人の身体の変容を目の当たりにして、整体をもっと広めなければなとか、そんなことを考えていた。

何やらここ何日か朝起きにくい。こういうときは自分で骨盤を触ってみる。

そうするといつもは締まり気味の骨盤が開いて下がっている。そして(いつも以上に)良く食べる。念のため脈を診ると「ド…キン」という引く脈だった。すると、ああ低調期だな、とわかる。

体の波ということを知らない時分は「こんなことではいけん!」といって夜中にお寺に行って坂道ダッシュなどしていたけど、今は低調の波に上手く乗るという風に対応が変わった。自炊していっぱい食べて、たくさん眠ればいい。これも整体の智慧なのですが。

低調というと何か調子が悪いと思われがちだけど、整体でいう低調とは休息、弛みの期間のことを指していう。特徴は寝ても寝ても寝足りない、飯を食べるとうまいので太ってくる、空想やヒラメキが湧きにくいなど、とかくアンニュイなわけです。

ここできちんと休めると高調を迎えた時バリバリ働けるようになる。心が静かな時は、こういう自分の波は割合すぐにわかるようになる。が、他人のとなるとこれは難しい。

それでも一つの目安として、体の生理的な波は7日、7日、と動き、気分の波は10日がひと周期と言われている。整体では人間は絶えず揺れているゆらぎの生き物とみている。世の中は常にこういう波が互いに影響しあっているからある意味新鮮でいられる。

下駄

下駄屋さんに行った折に、そのお店に有名な女性歌手が買いに来ているというお話を伺った。その方は自宅で一本歯の下駄を履きながら発声練習をしているとのことだった。

下駄を履くとくるぶしから下が固定されるのでおのずと腰や股関節の可動性が増す。その結果、腰が緩んでツヤのある声が出る。骨盤と横隔膜の関連が深いためだろう。

昔のものは何でも良いというわけではないが、日本の芸道は着物の帯を絞めて、下駄をきちんと履くことでパフォーマンスが向上するものが多い。

整体に因んだ話をすると、ある種の腰痛などには下駄を履くことが効果的だったりする。日本文化の良いものは残ってほしい。

鎮心の処

お昼ごろ自室で国会中継を見ていると、ある議員さんが答弁する時に手のアップになった。右手の親指で左の手の平をぐっと押さえていたのが印象的だった。カメラマンもそこが氣になったのだろうか…このとき押さえていたのは整体でいう上肢第一調律点、別名鎮心の処(ところ)だった。

人は不安になると手のひらのこの場所に塊ができる。そこに愉氣をして落ち着かせる技術が整体操法の中にある。一般には自分の感情を抑えるときにこの「手揉み」という動作が見られるわけだが、人間が集中すると無為動作の中にこうした本能の智恵が現れるようになっている。

この鎮心の押さえは野口晴哉著『整体法の基礎』に詳しい。引用すると

 相手と並んで坐ります。相手の掌の真ん中を、拇指で押さえます。これが構えです。ここは鎮心の処です。ここをちょっと押さえるだけで、相手の体勢を自由に崩せるのです。息を吸い込んでいる時にやれば、すぐ崩せる。息を吐いている時は、全然動かない。手が軽くなって来た時に押さえれば、いくらでも動かせるのです。それを、手の真ん中でやるのです。一人で気張って押す人もあるが、力ではないのです。相手の呼吸によるのです。(と、以下つづく…)

どんな職業も肉体からは離れては存在しえない。身体さえ整って腹に力がいっていれば物事に意欲的に取り組めるものだ。整体の知恵で人生の艱難を乗り越えられるかどうかはその人次第だが、知っておくと役に立つ場面は多い。

足の3・4指間

10月に入り時おり肌寒さを感じるようになってきました。今はエアコンのせいで夏場でも冷えを警戒しますが気候による寒さはこれからが本番です。

現代では冷え症などといって足の冷たさなどにお悩みの方も多くいらっしゃいます。また、冷えはいったん身体に入ってしまうと意識しなくなってしまうことがあります。氣づかないうち冷えというのが非常に注意が必要なのです。

野口整体では冷えの対処法がままあります。足の3.4指間の愉氣がそうです。足の甲、中指・薬指の間を手の拇指で広げるように愉氣すると身体の裡から暖かになる。ここは腹痛の急所として調律点に数えられている場所です。腹痛にもいろいろありましょうが、整体では冷えと腹痛は関連が深いと観ています。

もうひとつ悪寒の対処法として背骨からアプローチする方法があります。両肩甲骨の下端を結んだあたりの背骨を手のひらでこすってからじっと愉氣して温める方法です。

あとは足湯、いわゆるフット・バスのことですね。整体の本には鼻の通りがわるかった人が朝足湯を二日続けたら良くなったという例が記されています。ふっと氣でみると身体の失調の原因は日常の些細なことだったりする。

野口整体は深遠な生命哲学に立脚しているのですが、実践に移すにはこうした日常的な生活や身体の変化を見逃さずに適切な対処を行うことで良いのです。

「整体」ということにあまりこだわらず、こうした豆知識を気軽に大勢の方に楽しんでいただくことも楽しみの一つだ。