定休日だったのでミツコと太郎丸と3人で六本木アクシスビルの中にあるサボア・ヴィーブルに行ってきた。知人の個展を観に伺ったのだけど、ふだんは反町・横浜からめったに離れることがないので、完全にお登りさんの心境である。

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ギャラリー内は質にこだわった作品が整然と並んでいた。芸術作品はどれも一点ものなので、やっぱり普通の「お店」とは気の密度が違う。一点一点が独特の雰囲気を醸し出しているので、良いモノに触れたい方にとっては格別の空間だ。ミツコがいなかったらおそらく自分には縁のない世界だろうけど。

仕事の面から言うと、業種を問わず質の高いものに触れることはいい刺激になる。悪くすると独善に陥りやすい立場なので、今日のような体験は有り難い時間なのだ。野口先生がカザルスのチェロを聞いて自分の仕事の質を点検したという話が有名だが、これは同等の感性があって成立する話だろう。

余談になるが、職能的な「知識」とか「技術」というものは後天的に補えても、「質」というのは天分かも知れないなと思うことがある。瓦をいくら磨いたって鏡にはならないし、ガラスにダイヤモンドの変わりは務まらない。ただダイヤにはダイヤの稀少性があって、ガラスにはガラスの有用性があるのだ。素質自体には本来優劣はないわけで、どんなものであっても磨けば磨いたなりの姿にはなる。

8尺ほどの布に描かれた人物画を前に、自分の仕事の本分についてポツネンと考えていた。ミツコは作家さん(知人)の大ファンだという女性客に熱心に話しかけられて、ゆっくり作品を観るどころではなかった。太郎丸は背中で熟睡していた。