おなか

せい氣院に通っている方から「先生は内臓を診てるのですか?」と聞かれました。整体指導の時におなかに愉気(気の手当て)をするのでそう思われたのかもしれません。

たしかに整体の現場では肝臓や胃袋、腎臓めがけて愉気を行うこともありますが、僕が学んだおなかの整体は、もっと漠としたエネルギー体みたいなものを押さえている感覚です。

質問をされた方にはその時、「腹の虫というのは本当にいると思いますか?」というお話したのですが、僕の感性では西洋的な身体観を物理や数学に例えると、整体の(というか日本の)身体感覚というのは非常に文学的なんですね。

つまり解剖学的な内臓や骨よりもむしろ「腹の虫」とか、煮えくりかえっている「はらわた」押さえている、といった感覚の方が近い気がします。

おなかというのは観念的にいうと人間の許容範囲を現す場所です。すっと手を当てた時に「あっ、腹がでかい」という時は大抵は寛容でいられますが、精神状態が過敏になるとへそを中心にくーっと皮膚が集まっておなか全体が小さくなってくる感覚がおこります。

そういう時にへそに手を当てて(正面から見て)時計回りに「ずずぅー・・っ」と愉気をかけると皮膚がさらにいったん中心に集まります。そして力が集まりきったところですっと手を放すと頭を中心とした神経の緊張がさーっと抜ける。するとそれまでゆるせなかったこともなんとなく「ゆるせる」ようになることがあるんですね。

整体というと「背骨」というイメージが強いと思うのですが、その裏では、おなかの状態というのも同じくらい重要視して観ていきます。整体指導を受けておへその下に適度な弾力が戻るとおなかも意識も広々と開いた感覚になります。体の形は即、心の形、すなわちそれは人生の形という風に、肉体から生活そのものを見直していくのが整体の面白いところですね。

芸は人なり

座布団一枚! 桂歌丸のわが落語人生座布団一枚! 桂歌丸のわが落語人生

著者:桂 歌丸販売元:小学館

桂歌丸さんの自伝的落語道の本です。いわゆるプロ中のプロと呼ばれる方々の話は面白くて勉強になります。

この世界では師匠が高座をする時に「鳴り物」というのを多くはお弟子さんがやられるのだそうです。お化けのくだりになるとよくある「ドロドロドロ・・・・・・」というものなどです。(これは「ドロをいれる」というのだそうです。)するといわゆる「間」ということの、そういうリズム的な「勘どころ」が問題になってくるそうです。

師匠の噺の「間」を邪魔しないように音を入れなればリズムがくるってしまう。そうするとお客さんも聞きづらいし笑いにくい。間のわからない人というのはそういう点で人よりも苦労されるそうです。ちなみに歌丸さんは上手かったそうです。師匠、さすがです・・。

これは以前僕の整体の先生からお聞きした間にちなんだお話です。ある文筆家のS先生がお付きの整体指導者に、ある日、「整体のお仕事で一番大事なことは何ですか?」と尋ねられたそうです。するとお付きの整体師、応えて曰く。「先生、それは、リズムです。」という。するとS先生 「そうかぁ、うん、文学もね 、いい文章にはリズムがあるんだよ。」と。

深い話です・・。菊名池より深いです。

さて、「芸は人なり」とは落語に限らずあらゆる芸事は業(わざ)の中に人間性が出てしまうとのこと。いわゆる業というものは自分の人間性以上のものはどこをどう押しても出てこないのですから、人間性を磨くということが初めにあるんですね。僕にとっては整体のお仕事は人の人生にかかわる芸事、というか神事です。人の幸せのために生涯修行できればありがたいなと思っています。感謝してます。

冷える

また急に気温が下がりました。秋口は身体を冷やしやすいです、本当に…。お気を付けください。

窓際で眠る方は就寝時に雨戸、カーテンを閉めると効果的です。

肩の張り、お腹、腰の痛みなど感じられた方は足湯をお試しください。↓

足湯(部分温浴法)

謙虚

先日空手の先生に会いに行いきました。今習っているわけではありませんが学生時代通った道場の先輩として大変良くしていただいた方です。

先輩は10歳位年上なのですがお会いすると体の鍛え方を教えてもらったり、逆に整体で学んだことや最近気づいたことを話してみたり、いつでもやさしく接して頂いて僕にとってはとてもありがたい人です。

この間のカンブリア宮殿で村上龍さんが「本物は謙虚だ」という言葉を残されていました。たゆまず努力している人は決して威張らないという話でした。常に改善点を求めて研究しているので・・・自然と誰に対しても謙虚になってしまうとのこと。僕も見習わないと。

頭の整体

僕の整体では頭に手当てすることが多いと思います。ほかの方の整体をあまり見る機会もありませんけれど・・。わりと頭の操法が好きなのですね。

秋は頭が過敏になるので季節がら、なおのこと熱心になります。指先でささーと頭皮をなぞっていくとピタッと手が止まるところがあります。手が止まるところはだいたい少しくぼんでいるため「頭の穴」というふうにいいます。

「頭の穴」を指先で押さえると秋特有の頭のホワンとした感じや、過敏的なぴりぴり感が平静になって心理的に安定します。自分の頭で穴を探してピタッと手を当てていると気分がすっきりします。気持ちが落ち着かないときに試してください。

冷える

昨日おとといと、ぎっくり腰や肩こり・歯痛のご相談が何件かありました。ぱっと観るとお身体を冷やしている方が目立ちます。

横浜は昨夜の雨でまた大分涼しくなりました。一週間前とは気候がすっかり変わっています。ただ身体はまだ夏の骨格なので冷えに無防備です。防寒対策をしっかりしてお過ごしください。

HPにこの時期有効な足湯のやり方を掲載しました。ご予約の電話をされる前に一度お試しください。→足湯(部分温浴法)

朝比奈文庫

指導室に本棚があるので、そこからお客さんが見つけて氣なった本をよくお貸ししています。今日貸し出し中の本の数を調べてみたらなんと10冊を超えていた。貸本屋さん状態です・・。

本との出会いは人生にほんのちょっと舵をとらせます。良書に出会うと人生は良い方に舵をとり、そこからさらに良書に出会うというプラスの連鎖が起こるのだ。

にこにこ

最近ホームページに自分の写真をペタペタ貼っていたら、せい氣院に通われてる方に「先生は笑った顔の方が自然だからそういう写真にすればいいのに」とアドバイスをいただきました。

整体はシリアスなお仕事なのでHPの内容も写真も自然と真面目な感じになってきたのですが、たしかに僕の質(たち)というのは、いつも何となく「にこにこ」というか「ゆるり~」な感じのかのしれない。ある意味軽薄というのでしょうか・・。

思えばせい氣院を立ち上げた当初は、多くの方にライトな感じで整体を楽しんでほしいと思っていたのですが、仕事をしていくうちに氣が付けば当初の考えは霧消していた。本当に一日一日が真剣勝負なのです。

もっともっと自分のレベルを上げて苦しんでる人の期待に応えられるようになりたいとそんなことばかり考える毎日です。しかしながらユーモアと軽薄は別次元なので、笑顔は絶やさず顔晴りたいと思います。

ハイハイ

古武術研究家の甲野善紀さんの教室に参加した。昔、新宿紀伊国屋で行われた氏の講演を聞きに行ったことがあったのですがこういう稽古形式の集まりには初めて出ました。

3時間余りの実演を交えた講義だったのですが、途中先生が袴姿のまま「こうやって鍛えるんです。」と言って猫のようにハイハイで歩いてらしたのがかなり印象的だった。

上半身と下半身の関連性を高める運動かもしれませんね・・。実際にやってみるとハイハイの状態はご飯を食べるときの「噛む」動作や「首の回旋」が非常にやりやすくなるのです。これは四つ足時代の身体のなごりなのだそうです。骨の記憶というのを舐めてはいけない。骨格には太古からの生命の記憶が綿々と受け継がれているのだ。

思い起こせば野口整体を知ったのは甲野さんの『古武術からの発想』という本を読んだことだった。当時はなんだかよくわからないけどもう少し深く勉強してみたいと思ったものでした。7~8年前です。たぶん・・。よく考えたら僕と野口整体を結びつけてくれた恩人先生に手ほどきを受けたありがたい一日でした。

胸骨

胸骨とはいわゆる胸板の中央にある板状の骨ですが、最近整体の現場でこの胸骨に気を流すことが多くなりました。ちなみに膻中(だんちゅう)という免疫系のツボはこの胸骨上にあります。

胸骨の愉気(手当て)といっても直接ペタっとは触れずに、片方の手で背中を押さえて、もう片方の手を、ふわりとかざす、遠当てのような愉気になるのですが。

こうすると活元運動がが出やすいし早く身体も変化していかれます。それまでは全身を協調的に動かす要として仙骨を中心に見てきたのですが、仙骨の関節と同時に胸骨の愉気を行うと全身の気の通りがよりスムーズになっていかれます。

少し前に合気道の動画を見た時に、お弟子さんに胸もとの襟を掴ませた先生がタイミングよくお辞儀をすると相手が倒れてしまうというのを見たのですが、その先生は技の説明の中で「胸の操作で・・・」とお話されていました。今にして思うと胸とは胸骨を指していたのかもしれない。

自分でも胸骨と肋骨のスキマに愉気をすると全身の関節の動きが良くなります。もう少し技法が確立したらセルフケアの方法としてお越しになった方に胸骨の操法をお伝えしたい。