安産のための散歩

時を同じくして来院された妊婦さん方が、春の訪れと同時に出産ラッシュとなった。通っている方から「無事に生まれました」という報告を聞くと、・・ちょっと他では味わえない嬉れしさがあります。

安産するためにはどういう事が必要か。この辺りのことを書いてみます。いろいろあるけど、やっぱりどんな人にも勧めたいのは散歩です。歩くというのは自然に仙骨に力が集まりやすいから。特に上り坂。妊娠初期に無理は禁物ですけど、安定期に入ったらどんどん歩いてください。ただこれも一概には言えなくて、腰の状況とか、ひざの向きとか、本当は一人一人丁寧に観る必要はあります。

ある年配の助産師さんの弁で、「昔に比べて産める身体の人が本当にいなくなった」という話があった。いわゆる「昔」を知らないけど、「そうだろうな」と思う。どれくらいを昔というかにもよりますが、現代と比べて妊婦さんの運動量が圧倒的に違うことが予想される。私が最初にお世話になった大家さんが今80代で、子育てをする時には「洗濯機」がなかったそうな。当然食洗機もない。炊飯器も出来たばっかり。家事で相当身体を動かしている訳ですね。幼少期から考えると足腰の運動量が今とは大分ちがうでしょう。

こういうことを考えただけでも、今の妊婦さんは努めて歩く必要性を感じます。自分の自宅出産の時には最初の陣痛から30時間かかった。お産は瞬発力ではなく持久力なのだ。100%の力を出すのではなく、20~40%くらいの力で一昼夜粘るような体力がいる。その時に「手術」は男の仕事だが、命を手助けする「助産」は女の仕事だとつくづく思ったものだった。だから筋トレみたいなスポーツ的なトレーニングは適さない。とことこ、とことこ、毎日歩くのがいい。もちろん、ちゃんとウォーキングシューズを履こう。それから下り坂はちょこちょこ小股でいく(転倒防止と、ひざを痛めないように)。平坦、上り坂はときどき大股で10歩あるいて、また普通に戻す。しばらくしたらまた大股で。これを繰り返すと良いです。

お産は事前準備が9割で、受胎以前からの過ごし方が何より大事です。身体を整えたから受胎して、妊娠期は身体の波に沿って生活すること。とにかく「産める身体を育てる」ということが基本になる。整体をやるやらないは別として、とにかく今の妊婦さんには歩いていただきたいなと思う。