腰肚文化

東洋史上類をみない早さで西洋文明を流入し、従来の文化に同化・融合せしめた国、日本。明治という元号はその大躍進期の象徴ともいえる。

この世界史上でもたぐい稀といわれる維新と文明開化の原動力は、独自の身体文化に秘められていたと考える向きがある。

その腰骨を立て肚の実在感覚を養う独特のスタイルは、東洋文明圏の中でも固有の趣(おもむき)がある。

斎藤孝氏は著書『身体感覚を取り戻す』の中で「腰肚文化」という造語によって、この日本独自の身体性を簡潔に表すことに成功した。

それは高度な精神性の基盤となる骨盤と下半身の重要な用法であったと述べ、近年この腰肚文化が衰退することで自己の存在感が希薄化し、身心の中心感覚をも失われつつあると警鐘を鳴らす。

この本が出版されたのは2000年のことで、それから20年あまり経った現在も、この腰肚文化の衰退に関して具体的な解決策は見出されていない。

整体法の創始者である野口晴哉は、その卓越した先見性によって、昭和の初期から盲目的な欧米追従主義に異を唱え、日本人よ腰と肚を失うべからず、正しく坐すべし、正坐せよと唱導していた。

その要訣をひとことで言えば、坐骨を立て腰骨か伸びることにある。そのため、これを保つなら椅子坐であっても構わない。道は近きにありで、この端末を見ながらでも今すぐ正坐は行える。果たして今、自分の腰は伸びているだろうか。