「まず力を抜こう」ということはしきりに言われるが、実はものすごく根の深い話だ。
誰でも力を入れるのは簡単だが、入れた力がどれくらい抜けたかというのを判定することはむずかしい。
厳密に言えば少し訓練した判定者がそばにいればすぐ分かるのだが、力みが習慣化したクライエントにとってはそれが一人ではなかなか判らない。
惰性的に体調が悪く悩んでいるような人は、立っていても寝転がっていても少し刺戟するとピクッと力が入ってしまう。
そういう動作が当たり前になってしまっているのだが、こちらが触れながら「ここの力が抜けますか?」と問い掛けると、そこでだいたいは自分の力みに気づかれる。気づくけれどもそこですぐにクタッとゆるむかというとそうとは限らない。というより、それだけではほぼゆるまない。
概して高齢になるほどむずかしようだが、それでも3~4回指導を受ける間にはいくらかはゆるんでくるし、表面的な問題(頭痛や肩こりのような身体上の不快感)ならそれだけで消えてしまうこともざらである。
いろいろな難病の相談を受けることもあるが、原因を集約してみると「無意識の力み」であるといってまず相違ない。
ただしその原因が多岐に渡るので、ここで個人差というのが非常に重要になってくるのだが先ずは自分の中に起こっている力みに気づくことが入り口になる。
あまりにも単純すぎてありがた味のない理論かも知れないが、結果が複雑に見えるからと言って原因まで難解なものと考えるから多くの治療プロセスが混迷するのではないか。
自分の感覚を信じて磨いていくことが自立した健康生活への確かな道なのだ。