先月はじめて来られた妊婦さんが「恥骨がすごく痛い」という。「すごく痛い」は稀かもしれないが、妊娠期に恥骨に違和感を感じる方はだいたい1~2割位いる。妊娠期はリラキシンというホルモンの影響で恥骨(骨盤)だけでなく全身の関節、靭帯が柔らかくなっているので普段ではあまり見ないような故障も起こしやすいのだ。
野口整体ではこの妊娠期の「弾力と波」を上手く使って、妊娠・出産によりいろいろな持病を治したり、さらに出産前よりも丈夫にすべしと考える。小さい刺激でも大きく身体が変化するのが利点で、いつもよりもずっと負担を少なくやれるのだ。一般的には出産前後になると肩がこったり、腰痛になったり、問題事が増えるのだが、それはこの骨格の柔らかい時期にいろいろと間違った身体の使い方をしているからだ。
ただ「恥骨が痛い」という方に関しては、身体の様子を見る前に「着衣による骨盤の締め付け具合」を確認する。妊娠初期にはまだ細いジーンズをはいている人もいるし、お腹が一定大きくなってもきつい下着をつけている人がざらだ。これらのものはみんな骨盤の両側から「微弱な圧」をかけていることになる。ごくごく小さい力だが身体は常にその力に抵抗を強いられるので、特に妊娠期はこの小さな刺激が無視できない。
見ていると何故かはわからないが、頭が合理的によく働く人ほどきピチッとした服を好む。妊娠が解ったら出来るだけ早い段階で、たっぷりした感触のやさしいものを身に付けることを勧める。整体を受ける際に着替えをしていただくが、着替えただけで恥骨痛が消えている人がいる。こういうのが盲点だ。
さて、件の方は骨盤ベルトをしていた。お聞きすると1ヶ月ほど前からかなりきつく巻いていたので、恥骨を痛めたらしい。因みに骨盤ベルトで外から仙腸関節を補助したことで、かえって身体が怠けてしまった例を見たことがある。産後の肥立ちで苦労されていた。身体の適応能力をなめてはいけない。身体は守る暇があったら使うことだ。散歩をしたり、相撲の腰割りをやって、体力をつけて「その時」に備えて欲しい。