待つ

ミツコに続いて太郎丸も風邪を引いた。熱がなかなか下がらないので一時不安にもなったけど、それでも何もしないで待っていたらやがて症状は消えた。整体には「風邪は体の自然良能」という概念があって、病気は中断させずに最後まで使い切ること(病症経過)を説く。人為的に治すことよりも、命が一番良い働きをできるように、身体を整えてひたすら待つのだ。今回の太郎丸の場合は、熱が終わったら肌がつるっつるになった。それまで2ヶ月くらいはお腹にも背中にもカサカサが出ていたのに、今はピッカリしている。「病症が体を治している」とはこのことかと実感した。

話を戻すと、整体の技術は「待つ」ことだ。やってみるとわかるけど「何もしない」でいることは、「何かする」ことよりも気合いと根性がいる。河合隼雄さんは「何もしないということに全力を懸ける」という至言を残されたが、これにも通じる話かもしれない。こちらから「何かしよう」としなければ、相手は抵抗する力を失う。病気というのは苦しいものだが、そこをもう一つ丁寧に見ると「苦しい」だけである。苦しいことを「苦しい」だけで終わらせることができる人は力のある人だ。そういう人は苦しむ人の傍らにも静かに坐せるだろうな。治療者とは斯くありたいものである。