汗冷症

毎年のことだけど、そろそろクーラーで身体をこわす人が増えてくるだろう。

冷夏のようだったので例年と少し時期はずれるかも知れないが、まあ大筋の動きとしては大差ないはずだ。

しかし企業とか学校で「来月から冷房がつくので、必要な方は羽織るものをご用意ください」というアナウンスをよく聞くが妙な感じがしてしかたない。

そんなに寒くしなければいいじゃん、というのがごく自然のツッコミ衝動である。

身体感覚の問題だと思うが、夏はあついのが気持ちいいのだ。

近年は舗装道路とか排気ガスの問題とかも相まって酷暑が当然だから、多少なりとも人工的に冷やさなければなるまいが、だからといって何も寒くなるほど冷房を効かすこともないだろう。

「ものすごく熱い」から「すこし暑い」くらいまで下げればいい話ではないか。

ご存知の方も多いと思うが、野口整体の概念で「汗の内攻」という捉え方がある。

汗をかいて急に冷やすとそれで簡単に身体を毀す。

まず身体が重ダルくなる。頭痛や腹痛、下痢なども定番の症状だ。

こうなった場合どうすればいいか。

汗を冷やして引っ込めて毀したのだから、もう一度体温を上げてドカッと汗をかけばいい。

ただし風呂やサウナで温めても一度内攻した身体の汗は出にくい。できれば身体を思いっきり動かして中から体温を上げたい。

成人の方で身体を動かす習慣のない方は少々難しいかもしれないが、現代はフィットネス関連の施設がも充実しているし「その気になれば」どうにでもなるだろう。

汗の内攻に限らずだが、心身の調子を崩したときに治そう治そうとうにゃうにゃ試行錯誤しているよりも、「エイヤ!!」と身体を動かしてしまった方がさっさと調子が上がってくることは存外に多い。

総じて運動不足なのだ。

人間も動物であり、動物はみな動くように出来ている。

だから動かなければ病気になり、それを発奮材料に潜在体力を振作しようとするのである。

身体の不快症状には必ず全体性を保持しようとする合目的的な要因があり、結果としてある種の秩序に向かう動きがある。

その方向に向かって適量の刺戟を加えれば、心の鬱滞でも体の失調でもすらーっと流れていく。

汗の内攻に戻るが、赤ん坊や幼児などは要注意でクーラーや扇風機の使用を誤ると場合によっては肺炎のような重篤な状態になる。

保育施設や幼稚園でこの「汗」に関する知識をもっと共有できたらかなり重宝するだろう。しかし現状は病気と言えば早期発見と早期の薬物治療、予防接種が盛んに行なわれるばかりで、生きた人間の生理的な連絡性を掴まえようとする動きは一向に見えてこない。

汗を冷やすと具合が悪いということも「自分の感覚」から出発すれば存外カンタンに解るのだが、こういう主観主義は疑似科学からは排斥の的になりやすいのだ。だからまあ向こう100年位は致し方ないかもしれない。

何にせよ毎年のことなのでこちらは飽きてくる。どうにかならないものかと嫁に向かってぶつぶつ文句を言っていたら「どうにかしたいんなら洋ちゃんが言い続けるしかないんじゃないの?」と言われたためにこの記事を書くことになった。

数人しか読んでなさそうなサイトで汗冷症などと題してみたが「汗を急に冷やすと危ないよ」という概念が通説になることを願って唱え続けてみるか‥。