食息動想

人間の健康を保つ上で「食息動想」の四つの概念を考えよう、という教えがある。

操体法という気持ち良さを基準にする施術を生み出した療法家、橋本敬三先生の思想である。

読んで字の如く食事と呼吸、そして動作、想念、これらの4つ全てが整うことではじめて身体が安定すという話で、言ってみれば四輪車のタイヤだと思えばいいだろう。

どれか一個でもパンクしていたら、他の3つが問題なくても車はまっすぐ走れないのである。

確かに言われてみれば当然だが、何もないところからこうまでシンプルに健康の真理をまとめられるかというとむずかしい。非常に聡明な方だと思う。

一方で、その一つ一つを具体的にどうしたらいいのか?と考えるとそこから先はブラックボックスだったりする。

「動作」に関しては操体法の施術でだいぶ説明がつくが、食事一つとっても何をどう食べたらいいのかというのはまったく未知である。

体に適うように飲み、食いすればもうそれでよいのだが、その「適う」ということのものさしが大事なのだ。

誰に訊けばいいのか、といえばそれは当然自分の身体に訊く以外にない。

そのように考えていくと、その身体の声が聞こえるような澄んだ意識の構えを作るのが整体の役目である。

理屈は簡潔だが、実現には正しき訓練がいる。活元運動はそのひな形ともいえる。

先に体が整えば食・息・動・想はみんな自然と正常になる。龍の絵に目を入れると天に舞うというが、整体は先に目を描いてあとは勝手に龍にしてしまおうという考え方なのだ。

方法と結果のベクトルが逆だが、整体も操体法も同じ真理を掴んでいたものと思われる。目指す山は一緒だけれども、登頂ルートはいろいろあるから面白い。