リミット

一昨年の今頃、河合隼雄さんのカウンセリング関係のものをよく読んでいた。そこで初めて個人セラピーにおける「限界」という言葉を知ったのだった。これはカウンセラーの仕事の限界も表すし、人間一人の力の限界を知るための表現でもある。

身体の調子を崩す原因は十人十色、千差万別で、「この人はなぜこうなったのか?」と絶えず考えつづけるのが整体の仕事だ。ただ、そうした中にもやはり定番型というのがあって、「他人のストレスを過剰に請け負ってしまう」という方が一定の割合でいらっしゃる。

つまり、体力的、時間的、精神的にここまでならできるけど、これ以上はできない、という「線引き」が曖昧な人のケースだ。「良い人・やさしい人」として歓迎もされる反面、最終的には個人的にも人間関係においても無理がたたってきてしまう。

いわゆる心理的な問題なのだけど、整体指導の場合は心も体も区別なくその人の悩みに取り組んでいく。そして何故かはよくわからないが、腰がやわらかくなると、どなたでも無理なく自己主張ができるようになってくるから不思議だ。そして自分の感じたことを表現し、行動に移す習慣が付いてくる。

他者との対話力を養う前に必要なのは、自己との対話なのだ。まずは思考ではなく感情の動きの一つ一つに学んでいくことから始まる。心は自分の限界点をちゃんとわかっているからだ。そのために頭を休め、心を落ち着かせる所までが当院の仕事のリミットだったりする。そこから先はやはり指導を受けられる方の領域なのだ。いつもついやり過ぎるので、自分に言い聞かせているのだと気がついた。