せい氣院に通っている方から「先生は内臓を診てるのですか?」と聞かれました。整体指導の時におなかに愉気(気の手当て)をするのでそう思われたのかもしれません。
たしかに整体の現場では肝臓や胃袋、腎臓めがけて愉気を行うこともありますが、僕が学んだおなかの整体は、もっと漠としたエネルギー体みたいなものを押さえている感覚です。
質問をされた方にはその時、「腹の虫というのは本当にいると思いますか?」というお話したのですが、僕の感性では西洋的な身体観を物理や数学に例えると、整体の(というか日本の)身体感覚というのは非常に文学的なんですね。
つまり解剖学的な内臓や骨よりもむしろ「腹の虫」とか、煮えくりかえっている「はらわた」押さえている、といった感覚の方が近い気がします。
おなかというのは観念的にいうと人間の許容範囲を現す場所です。すっと手を当てた時に「あっ、腹がでかい」という時は大抵は寛容でいられますが、精神状態が過敏になるとへそを中心にくーっと皮膚が集まっておなか全体が小さくなってくる感覚がおこります。
そういう時にへそに手を当てて(正面から見て)時計回りに「ずずぅー・・っ」と愉気をかけると皮膚がさらにいったん中心に集まります。そして力が集まりきったところですっと手を放すと頭を中心とした神経の緊張がさーっと抜ける。するとそれまでゆるせなかったこともなんとなく「ゆるせる」ようになることがあるんですね。
整体というと「背骨」というイメージが強いと思うのですが、その裏では、おなかの状態というのも同じくらい重要視して観ていきます。整体指導を受けておへその下に適度な弾力が戻るとおなかも意識も広々と開いた感覚になります。体の形は即、心の形、すなわちそれは人生の形という風に、肉体から生活そのものを見直していくのが整体の面白いところですね。