鎮心の処

お昼ごろ自室で国会中継を見ていると、ある議員さんが答弁する時に手のアップになった。右手の親指で左の手の平をぐっと押さえていたのが印象的だった。カメラマンもそこが氣になったのだろうか…このとき押さえていたのは整体でいう上肢第一調律点、別名鎮心の処(ところ)だった。

人は不安になると手のひらのこの場所に塊ができる。そこに愉氣をして落ち着かせる技術が整体操法の中にある。一般には自分の感情を抑えるときにこの「手揉み」という動作が見られるわけだが、人間が集中すると無為動作の中にこうした本能の智恵が現れるようになっている。

この鎮心の押さえは野口晴哉著『整体法の基礎』に詳しい。引用すると

 相手と並んで坐ります。相手の掌の真ん中を、拇指で押さえます。これが構えです。ここは鎮心の処です。ここをちょっと押さえるだけで、相手の体勢を自由に崩せるのです。息を吸い込んでいる時にやれば、すぐ崩せる。息を吐いている時は、全然動かない。手が軽くなって来た時に押さえれば、いくらでも動かせるのです。それを、手の真ん中でやるのです。一人で気張って押す人もあるが、力ではないのです。相手の呼吸によるのです。(と、以下つづく…)

どんな職業も肉体からは離れては存在しえない。身体さえ整って腹に力がいっていれば物事に意欲的に取り組めるものだ。整体の知恵で人生の艱難を乗り越えられるかどうかはその人次第だが、知っておくと役に立つ場面は多い。