活元会 2017.11.25:マジメも休み休み言え

11月25日(土)活元会では河合隼雄『こころの処方箋』を使いました。


13 マジメも休み休み言え

…マジメな人は自分の限定した世界のなかで、絶対にマジメなので、確かにそれ以上のことを考える必要もないし、反省する必要もない。マジメな人の無反省さは、鈍感や傲慢にさえ通じるところがある。自分の限定している世界を開いて他と通じること、自分の思いがけない世界を開いて他と通じること、自分の思いがけない世界が存在するのを認めること、これが怖くて仕方がないので、笑いのない世界に閉じこもる。笑いというものは、常に「開く」ことに通じるものである。

「マジメも休み休み言え」、というときの「休み」が大切なのである。休んでいる間に人間は何か他のことを考える。休みという余裕が、一本筋の自分の行き方以外に多くの他の筋があることを見せてくれるのである。こんなことを考えてくると、日本人がユーモア感覚に欠けると批判されることと、日本人が休みを取りたがらないということが深く関連していることがわかってくる。「マジメ人間」の日本人が、休みなしにマジメにやるので、国際社会で嫌われものになり勝ちなのである。…(河合隼雄著『こころの処方箋』より 太字は引用者)

真面目な人は不真面目な人を見るとついイライラしてしまう。

「あんな態度で仕事(生活)していてまったくだらしがない」などと言いながら過度な批判を浴びせるのは、そこに普段の自分が抑制している心の反面を見い出す(投影する)からかもしれない。

よく考えてみれば、このようなことは「真面目か、不真面目か」という問題だけに限らず、人間は自分とは正反対のタイプの人につよく惹かれたり、逆にイラ立ったりしやすい。

この惹かれたりイライラしたりするときに、たいていの場合は「自分のこころ」は大なり小なり揺さぶられ、ともすれば知らず知らずのうちに自我の変革をせまられているのである。

また一方では「変わりたい、変わらなければ」と思いながらも、「自分もなかなか捨てたものでもない、その自分を大切にしたい」という二律背反のこころを内包するのが人間の面白いところだろう。

特に「真面目」などは一面的にはその人の長所たりえるので、そのようなところにまでわざわざ改善の余地を見出して、変わっていこうとする人は少ないのも肯ける。

そのようなときに「マジメも休み休み言え」と正面切って言う人が現れたら、それは僥倖かもしれない。

もしそのことによって、いつもの真面目な自分というものがすっかり「休んで」引っ込んでしまうと、そのときにようやく「自分」と一体化している「真面目」との間にスキマができる。

そのスキマに普段「自分」によって抑圧されている「不真面目」なこころが吹き込んで来たならしめたものである。そうやって吹き込まれた「不純物」がほんの少しだけこころを変性し、頑なになっていた「自分」を溶かしてくれるかもしれない。

少し話は変わるが、休みといえば一休さんが象徴的だが禅のほうでもこの「休み」は重用されるものである。また個人的には道元禅師による以下の一節を思い浮かべる。

諸縁を放捨(ほうしゃ)し、万事を休息して、善悪を思わず、是非を管(かん)すること莫(なか)れ。 (『普勧坐禅儀』より)

現代人ならばここでいう「万事を休息する」というものがどんな状態をさすのか、よくよく考えてみる必要があると思う。

多くの場合「休みの日」には行楽に出かけたり趣味に興じたりなど、いわゆる「遊んで」過ごすものだが、果たしてこれらは本当に「休んで」いるのだろうか。

そこには「休み」と「遊び」が微妙に混じりあったりして、かえって普段よりも「働いている」面がないともいえない。

加えて言えば「諸縁を捨てる」というのも「縁(えにし)」というものがきちんと判っていなければ、正確に履行されることなどおよそ不可能である。

野口整体の場合は「ポカン」という一語に「捨てる」も「休み」も、「救い」も「悟り」もみんな集約されてしまうのだから、すこぶるシンプルなものと言える。

いずれにしろ精度の高い身体訓練が要求される世界であることに変りはない。その点「活元運動」は一番の遠回りであり一番の近道でもあり、そして王道ではないか、と私には思えるのだ。

その方法論たるや全くもって人を選ばず、真面目な方も不真面目な方も諸縁を放捨し万事を休息して、皆一同に躍動する無意識に身体をあずけてしまえばそれでいいのである。これによって、こころの内外から壁が取り払われて一つの全体性へと続く無意識の扉が開かれる。

実際はどの「道」を辿っても信じきれれば開けるし、「信」が中途半端なら半端な結果しか生まれない。そこだけは本人のちからに頼むしかないようで、こちらで出来ることと言ったらいつでも「門を開けておく」ことくらいに思えてくる。

あわよくば同志の人を得れば幸せと思う。

次回の活元会は11月30日(木)です

(この記事の参考図書)