野生の哲学

仕事のあい間にベランダの洗濯物をしまおうとしたら、屋根の下に大きなハチがうろうろしていた。よく見ると巣を作り始めているではないか。知り合いが昔スズメバチに頭を刺されて、救急車に乗った話が思わず頭をよぎった。

頭から白い布をかぶってささっと追い払おうとしたら、案の定こちらに真っ直ぐ飛んできた。気がついたら頭を股下に突っ込んで前方回転受け身で交わしたが、起き上がりざまに物干し台にしたたか頭を強打ス。ディズニーの実写みたいだった。

野口整体をはじめたころは「身体が整うとどうなるの?」と思ったけど、最近はやればやるほど自然体になってくることを実感している。活元運動をやっていると、「反射運動」とか「危険回避」能力とか本能的なものがさっと出やすいのだ。整体では「錐体外路(性運動)系」という言葉であらわすけど、自然治癒力とか、恒常性維持機能とか生命のバランスを勝手に取る力が大切だ。整体の目的はこれがしっかり発揮される条件を整えることで、そのためにじゃまをしているもの取り除いていく。そのほとんどのものが人間の「頭のはたらき」なので、思考がよく休まれば大抵のものは良くなるのだ。

最初から備わっているものを使うのだから「何も訓練などいらないのかな」とも思えるけど、逆に「最初からあるもの」を有効に使おうとする人は少ない。「自然」とか「野生」とかそういうものが身体に現れるためには、人間の場合は後天的な「訓練」がいるだろうなと思う。何かを「身に付ける」のではなく余分なものを取っていくという話で、やっぱり活元運動が近道なのだ。これで頭をぶつけてなければ説得力も増すんだけど。