筋トレについて

新しい方が整体に通い始めると、一定の割合で「筋トレの是非」について訊ねられる。

少し前までなら筋トレに関しては「やりたければどうぞ」というスタンスだったが、近頃は「迷っているのだったらやめた方がいい」という風に変わった。

一口に筋トレと言っても今や運動の種類も豊富で、本当は質とか量の問題も重要なのだ。それだけに一概に「良い」とか「悪い」とか答えにくいのも事実だ。

そもそも一般的な筋トレの目的は、体型をかっこよく整えたい、というのと腕っぷしに憧れてやる人が多いのではないだろうか。

体型に関しては外形を整えるという点では多少の利があるけど、それ以外(特に健康面)はあまり功徳は期待できない。

筋肉が太くなったり固くなったりすると、身体内の「流れ」とか全身心の「連絡性」に支障が出やすい。人がケガをしたり病気をしたりする要因は、ほとんどこの身体の連絡性の悪さだったりする。

そこで整体の仕事は渋滞した道路に交通整理員を立たせて、血液やリンパ、気の流れを回復させるようなものだとも言える。そのためには筋肉、骨、内臓など、あらゆる部位の「ゆるみ」が鍵なのだ。

何をもって「良い身体」、「健康体」と呼ぶかにも左右されるが、「整体」と「過剰筋力体」は両立できないというのが結論だと思っている。

斯く言う自分自身も整体歴11年の中で前半期の7~8年は筋トレをやっていた。それからだんだん力を入れないことの効用を体験的に学んで行った感がある。

趣味嗜好の問題と言えばそれまでだけど、年を重ねると必要に駆られて頑張らない方法、ラクして成果を出す方法を模索するのかもしれない。

だいたいスポーツや格闘技、心理学などコミニュケーションの世界でも全体的に身体の「ゆるみ」や「柔らかさ」が注目されている。筋トレをしなければ「柔らかい」かというとそうでもないのだが、どこかで固定的に踏ん張ればそれだけ「ゆるみ」や「自由性」は失われやすい。

ただし精神活動が身体に及ぼす影響も大きいので、同じトレーニングをしていても結果はかなり違う。そういう観点からも個人個人に合う合わないという諸問題は尽きない。

結局は自分自身で体験的に見極めたものが一番確かということになるだろうか。身体感覚が発達してくると、何が自分に適っているかが自ずからわかってくる。

筋トレの是非についても、整体を続けていけばやがては収まるところに収まるだろう。何が正しいかをいちいち人に訊ねなくて済むようになったらそれが何よりだろう。