骨盤が狭いと難産になるか

よく難産の原因として「骨盤が狭かった」から、と言われることがあります。

あるいは「骨盤が歪んでいたから」とか「あなたは生まれつき骨盤が小さいから」とか、バリエーションはいろいろありますね。確かに分娩時の骨盤の状態は重要です。これ以上ないくらい。

ですがそれが「難産の原因」とはなりえません。

原因は別にあります。

整体が考える「分娩で一番大切なこと」は骨盤の幅ではなくて「リズム」です。少し表現を変えると身体の波を知って、「その時」に産めば自然と骨盤は開きます。それは「リラキシン」という妊娠期に関節や靭帯を緩める女性ホルモンの影響によって、骨盤の可動性が大変に大きくなっているからです。

ですがそのような妊婦さんでも、身体の波を知り、波を待って、その波に乗る、ということができないといくら気張っても楽に生まれなくなります。これが難産です。

本来は人間の生理的な働きには、食べ物を飲み込むことでも、大小便をすることでも、鼻をすすることでも「難しいこと」なんか一つもないのです。ただ人間の知識が先行して事実を誤認すると「難しくなる」ことはいくらでもあります。

例えば大便をすることでも、「その時」にすれば簡単に気持ちよく出ます。ですけども、例えば飛行機に乗るからといって、無理やり早く出そうとしてもそれは難しいし、快感もありませんね(難産です)。大便ならそれほど周りも騒ぎませんが、出産の場合は本人意外にいろいろな方が介在してきます。第一、出産には「予定日」というのがありますけど、大便の「予定時刻」は聞いたことがありません。そんなものを他人に設定されたら気になって、出ずらくなるでしょう、きっと。

こういうこと一つ取っても、普通の医療のお世話になっているだけでは分娩における「身体の波」を感じることが難しいことがわかります。今まで来院された妊婦さんでも、出産する時期ではないのに周りが急がせて、大変な思いをされたケースをいっぱい観てきました。

整体ではこうならないために、早い時期から妊婦の身体感覚を高めていくことを説くわけです。また大便を例に出しますが、体調が良い時は何も考えないでその時にさっとでますね。身体が整っているというのはそれだけ生理機能をスムースにするのです。

整っていれば波は容易にわかりますが、調子が乱れているとわかりません。ですから妊娠期に整体をやるのは身体感覚を高度に磨くためであって、骨盤矯正のためではありません。矯正したって、身体のリズムがわからなければ結局は役に立たないのです。

こういうことから、安産のために「骨盤が狭いか広いか」を論じることに意味がないことがわかりますね。骨盤が狭い、小さいを気にされている方はそこではなく、「身体の感覚」の方に目を向けてみてください。こちらの方がずっと重要なのです。