立腰教育

今は空前のボディーワークブームだ。20年ちょっと前はヨガなんてかなりディープな世界だった気もするけど現在はその人口も女性を中心にずいぶん増えたものだと思う。

美容目的で行われているものも半数以上はありそうだけど、うちにお越しになっている人たちの話を聞いていると「肉体」に漠然とした可能性を求めている女性は存外に多い。

経済成長が頭打ちになった現代ではいくらイイ会社に入って一定の収入を貰っても、幸福感は別次元であることが露呈してしまった。

そういう心と体の「渇き」を埋めるために次なるものを求めて、身体の可能性や精神世界に傾倒している人が少なくないのが実態らしい。

成人になってからこういう身体の学びをもとめるのは、子供時代の身体を使った遊びの体験があまりに少ないからだ。かくいう僕なんかもファミコン直撃世代だが、キレるという言葉が一般化したのも大体同世代で、時期的にはリンクしている。

文化というものはその土地土地の風土が生み出す身体性から発展していくもので、身体が萎えれば文化も脆弱になるのは自然の道理となっている。

逆に肉体を正しい方向に刺激していけば個人が自立し、やがて公、地域や社会、国までが強固になっていくのも明白な事実だ。

森信三さんの『立腰教育入門』という本には姿勢が精神に及ばす影響がいくつも書かれているけど、おそらく今の教育現場では望むべくもない空論として軽視されるのがオチではなかろうか。

立腰教育とは「仙骨を立てる」という作業が教育の要で、腰が伸びることが即人間形成となりうる。またそれは万病予防の基本でもある。そして自分の心と体、そして実生活における中心線を物理的に堅持する要になっている。

せい氣院に来る女の人は月経不順や不妊、自律神経系のトラブルやホルモンバランスの欠如(バセドー)のような悩みが多く、対症療法に追われて改善の決め手がないまま漫然とやり過ごしている人の数は少なくない。

そういう不調も、姿勢の指導を3ヶ月、半年単位で行うと改善されることがあるので姿勢は侮れないのだ。いわゆる野口整体の身体感覚、と森信三さんの立腰教育というのは日本特有の身体養生観という点で通底している。

ただ、姿勢を「正そう、正そう」と言ってもそうなるものではなく、無駄な力を抜くことが適切に行われる高い身体意識が要求される。

いわゆる「訓練」がいるのだけど、野口整体では活元運動が重要な役割を占めるメソッドだ。はじめのうちは効果も意義も見出しにくいが、続けることでけっして失われることのない自分の財産になる。

せい氣院の整体に賛同される人には活元の教室にも参加して続けて欲しいとは思う。僕自身野口整体をはじめた当初は活元にあまり関心を持てなかったので無理には勧められないけど、個人指導の目的が最終的に自立である以上は活元運動は必須課題の一つだ。